ハンドレンジの意味がわからない方はまずはハンドレンジの記事からご覧ください。
相手のハンドが見えないポーカーにおいては、出来る限り高い精度で相手のハンドレンジを想定し、その相手のハンドレンジに対して、自分のハンドがどういった位置(勝ってるのか負けてるのか微妙なのか)にいるのかが非常に重要な考え方になります。
自分のハンドが、相手のハンドレンジに対してどれだけの勝率があるのか、などを計算してくれるツールがあります。一番使いやすいのはpokerstrategyのエクイラボではないでしょうか。
こちらから無料でダウンロードして使えます。使えるのはPCののみです。
例:Aが落ちたからKKを捨てる?
6人のテーブルでMP1が3BBにレイズ、BTNのあなたはで3ベット、するとMP1はコールしました。ポットは20BB、MP1の残りスタックは25BB、あなたは50BBとします。
フロップ:
MP1は25BBをオールイン
あなたはAが落ちたのでポットを諦めてフォールド。
よくある光景ですね。さて、Aが落ちたからフォールド、という判断は正しいのでしょうか?
結果的に相手がAを持っていればフォールドは正解で、持っていなければ間違いでしょうか。
もちろんそうかもしれませんが、それはショーダウンするまでわからないことです。
結果論ではなく、ハンドレンジという考え方から判断の正誤の考えてみましょう。
MP1のオープンレンジは上位25%のハンドだと仮定します。
上位25%のハンドレンジとは
66+, A2s+, K6s+, Q8s+, J8s+, T8s+, A7o+, K9o+, QTo+, JTo
となります。
しかしあなたの3ベットに対し、MP1はジャストコールしました。3ベットに対するコールするレンジは上位5%を除く(4ベットするので)、上位15%(16~25%はフォールド)だと仮定します。そのハンドレンジは
88-77, ATs-A7s, KJs-K9s, QTs+, JTs, AQo-ATo, KTo+, QJo
となります。
フロップ:
MP1は25BBをオールイン
まずポットオッズを計算してみましょう。
20BBのポットに対して相手は25BBのオールインをしました。
あなたはあと25BBを出して、勝てば70BBを手にします。よってオッズは2.8倍。必要な勝率は35.7%です。
この状況で相手が持ち得る全てのハンドでオールインしてきたとした場合、あなたのハンドの勝率は以下の通りです。
- MP1:49.82%
- あなた:50.18%
なんと50%以上勝っています。
必要な勝率は35.7%なのでコールできます。
もちろん、相手が持ち得る全てのハンドでオールインしている、という判断が正しいかどうかが大事です。
相手がコミットしており、コミットしていれば絶対に降りない、というようなプレイヤーであれば持ち得る全てのハンドでオールインしているでしょう。
MP1が、Aヒットしていないのでポットを諦める、というような慎重なプレイヤーの可能性もあります。そうした場合はレンジを相手のレンジを狭めて考えなければなりません。
相手のレンジをアクションから調整する
9人のテーブルであなたはMPからで3BBにレイズ、するとタイトなBTNがコール。ポットは7.5BB。
フロップ:
あなた4BBをベット→BTNコール。ポットは15.5BB
ターン:
あなたチェック→BTNチェック
リバー:
あなたチェック→BTN10BBをベット
さて、あなたはこれをコールすべきか降りるべきか?
あなたはこれにコールすると、10BBを出して35.5BBのチップを得るので、ポットオッズ3.55倍、必要な勝率は約28%です。
BTNはタイトだしKやJはさすがに持ってるだろう!と考えて降りる人。
相手はフラッシュを完成させた!と思って降りる人。
フラドロ滑ってブラフしてるに違いない!と思ってコールする人。
9とかのミドルヒットだろ、と思ってコールする人。
いろいろあると思いますが、どれかを決めつける勝手なリーディングをしていると、期待値プラスのプレイはできません。
では、相手のハンドレンジを想定しながらもう一度流れを見てみます。
9人のテーブルであなたはMPからで3BBにレイズ、するとややタイトなBTNがコール。ポットは7.5BB。
この時点でのBTNのハンドレンジはタイトなプレイヤーなので、上位5%以下15%以上のハンドレンジだとします。(上位5%のハンドなら3ベットしているはずなので除外します。)
レンジはこのようになります。
88-77, ATs-A7s, KJs-K9s, QTs+, JTs, AQo-ATo, KTo+, QJo
組み合わせ総数は136通りで、全組み合わせ1326通りの10.26%です。
フロップ:
あなた4BBをベット→BTNコール。ポットは15.5BB
フロップでのあなたのベットに対するBTNのコールレンジは、Aハイ、全てのワンペア、OESD、フラッシュドロー、2ペア、セットのいずれかだとすると、相手のハンドは
88-77,ATs-A7s,KJs-K9s,QdJd,QdTd,JdTd,AQo-ATo,KTo+
となります。相手のプリフロップでのコールレンジの中にOESDになるハンドはありませんでしたが、ソフトウェアが出したプリフロップのレンジを厳密に守る必要はありません。OESDになるT8を相手のレンジに入れても問題ないでしょう。また、99のセットもレンジに入れます。よって、相手のレンジは以下のように想定します。
99-77,ATs-A7s,KJs-K9s,T8s,QdJd,QdTd,JdTd,AQo-ATo,KTo+,T8o
現時点での相手のハンドレンジとあなたのハンドの勝率は
- あなた:50.19%
- 相手:49.81%
となります。
ターン:
あなたはポットコントロールのためにチェックすると相手もチェックしました。ここで相手のハンドレンジから2ペアとセット(K9、77、99)を除外します。通常それらのハンドではターンでベットするだろうからです。よって相手のハンドレンジは
88,ATs-A7s,KJs-KTs,T8s,QdJd,QdTd,JdTd,AQo-ATo,KTo+,T8o
となりました。現時点ので勝率は
- あなた:59.20%
- 相手:40.80%
となります。セットと2ペアを除外したので勝率は若干あがりました。
リバー:
あなたはチープショーダウンを目指してチェックすると相手は10BBをベットしてきました。
さて、ターンの時点ではあなたは57%勝ってます。リバーが開いてオーバーカードとなる3枚目のスペードが落ちました。相手がT8のOESDだった場合ストレート完成です。
自分のハンドとターン時点での相手のハンドレンジ全てと現在のリバーまで開いたボードでの相手とあなたの勝率は以下のようになります。
- あなた:41.25%
- 相手:58.75%
AJ、QJ、JT、T8などに逆転されたため、勝率は下がっていますが、オッズから見た相手のベットにコールするために必要な勝率は30%ですから、コールが正解・・
いやちょっと待ってください。
相手は持ち得る全てのハンドで10BBのベットしてきたのでしょうか?
相手のハンドを考察してみます。
- Aハイ
=AQ、ATでブラフするか? - 7、9、8のワンペア
=88、A7、A9でバリューベットするか? - JのワンペアAJ、QJ、TJでバリューベットするか?
- KのワンペアKQ、KTでバリューベットするか?
- 2ペア
KJでバリューベットするか? - T8のストレートでバリューベットするか?
- スペードのフラッシュ完成A8s、KTs等でバリューベットするか?
- フラッシュドロー
ダイヤのフラッシュドローは全て引けず。ブラフするか?
A7、A9、88はショーダウンバリューがあるためにチェックし、それ以外のハンドではベットしてくる、と仮定します。よって、相手のリバーでの10BBのベット後のハンドレンジは以下のように調整します。
88,ATs-A7s,KJs-KTs,T8s,QdJd,QdTd,JdTd,AQo-ATo,KTo+,T8o
↓↓↓
ATs,A8s,KJs-KTs,T8s,QdJd,QdTd,JdTd,As9s,As7s,AQo-ATo,KTo+,T8o
すると勝率は以下のようになります。
- あなた:31.88%
- 相手:68.12%
かなり勝率は下がりました。、コールするにはギリギリです。
もし相手がAハイグッドキッカーにショーダウンバリューがあると考えて、AQをハンドレンジから除外すると・・・
- あなた:17.54%
- 相手:82.46%
となります。相手の10BBのベットをしてくるハンドレンジ対してあなたが勝ってるのはフラドロ滑りのハンドとATぐらいになるのです。
さらに、フラドロ滑りのブラフベットを、する時もあればしない時もある(毎回ベットするわけではない)、と仮定すると勝率はさらに下がります。
このように、相手のハンドレンジによって、勝率は大きく上下します。
Aハイやミドルヒット、フラドロ滑りなどでとにかくベットしてくるようなルース(というかフィッシュ)相手にはコールし、ブラフはあまりせず、薄いバリューベットはせずにショーダウンを目指すような慎重なプレイヤー相手であればフォールドというのが正しい判断になりそうです。
相手のハンドレンジをどう知るか
ハンドレンジは以下のような要素から推測するしかありません。
- 相手のプレイスタイル=オープンレンジを推測
- 相手の過去ショウしたハンド=ブラフハンドを持ち得る割合を推測
- 相手のアクション=ボードとのマッチを推測
ただし、実際それらのハンドを持ち得るのかどうかを完全に確認する方法はありません。
特にルースなフィッシュはレイズするハンドに傾向など無い(気分でレイズする)場合もあり、ハンドレンジを想定するのは意味がないかもしれません。しかしそういった場合でも広くレンジを想定して、相手のハンドをレンジで考える癖はつけるべきです。
ある程度常識的なプレイヤーであれば、高い精度でハンドレンジは想定できます。もちろんそういったプレイヤーも時にはレンジから外れたハンドを持つこともあるでしょうが、多くの場合レンジ内のハンドを持っています。
また、相手のハンドレンジに対してオッズに合うからとコールしてショーダウンしてみるとモンスターハンドが出来てた、なんてことはよくあることで、「くそっ!おれはなんでコールしちまったんだ!」という経験は誰しもあるものです。しかし悲観してはいけません。
このコールがミスなのか正しいのか、というのはこれだけではわからないのです。相手のレンジの中で、数多くのエアーがあるにもかかわらずたまたま今回はモンスターハンドだったのかもしれませんし、実は相手のレンジのほとんどがメイドハンドしかなくで、コール自体が間違いだったのかもしれません。
ここにハンドレンジの難しさがあります。ゲーム後に「相手のレンジはこれくらいでしたよ」と回答がわかるのであれば学習することができますが、相手のレンジはショウしたハンドからは完璧にはわかりません。
自分の判断(想定する相手のハンドレンジ)が正しかったかどうかは、調べるとすれば相手に聞いてみるしかありません
「あなたのハンドレンジはどれくらいでしたか?KJでも同じことしてた?J9とかエアーでもしてた?AAもあり得る?」と。
レンジ?なにそれ?という相手であれば聞くだけ無駄ですし、毎ゲームそんなことをするわけにはいかないので、やはりゲームを数多くこなして、プレイスタイルやショーダウンしたハンドの傾向と、今まさに目の前で相手が行なったアクションから推察するしかありません。というかそうすべきです。
そもそもそういった質問はオンラインではできませんし、ライブでも相手の回答が正しいか疑わしいものです。
「おれはブラフしないよ!だからレンジにJTとかJ9は入らないね!」と言ったとしてもそれがブラフの可能性もありますし、本人も間違ってる場合があります。(実際JTを持てばブラフしたくなるかもしれない)
また、相手のレンジに対して負けているからとフォールドしてしまうと、相手のハンドはショウされずわからずじまいです。こうなると、あなたが負けていると判断した相手のレンジが正しいのかどうかはさらに闇の中です。
ここまで読むと、相手のハンドレンジなんか把握するのは無理!と思う人がいるかもしれません。
その通りです。相手のハンドレンジを正確に把握するのは不可能です。しかし精度はあげれます。ポーカーの基本原則である、「相手のハンドが見えていた時に行なうプレイを正しく行なう」という究極の解に近づくためには、相手のハンドをレンジで考え、精度を上げていくしかありません。
ライブでよく相手プレイヤーがAKをショウして「絶対AKだと思った!」と言う人がいますが、相手のハンドをレンジで考えていないことを暴露しているようなものです。
相手のハンドを決めうちするのはやめましょう。100%はないのです。
※超ロックが5ベットしたので相手はAAであると決めうてることは有り得ます。
相手をハンドレンジで考える癖がついたら、今度は自分のハンドもハンドレンジで考えて見ましょう。
コメント 名前とメアドは必須ではありません