ドンクベットとは直訳すると間抜けなベット、バカなベット、という意味になります。
ドンクベットとは
ポーカー業界では具体的には以下のようなプレイを指す用語として使われており、決して相手をけなす言葉ではありません。(ただしそのように受け取る人もいるかもしれないと留意しておくこと。)
- プリフロップでBTNレイズ→BBがコール→フロップが開いてBBが先にベット
- フロップでBBチェックし→BTNベット→BBコール→ターンが開いてBBが先にベット
- プリフロップでBBレイズ→BTNリレイズ→BBコール→フロップが開いてBBが先にベット
などです。
つまり「オリジナルレイザーやアグレッサーまでチェックでまわす」という教科書的なプレイをせずに、先にベットすることを指します。
日本人だと「先打ち」する、という言い方をするかもしれません。
※広義では、あまりに大きすぎるベットや、普通考えられないプレイのことを指しますが、主に上記のような、アグレッサーの前にベットすることを指します。
一般的にドンクベットは下手なプレイヤーが行うプレイ、弱みを表すプレイであることが多いため、そのような名前がついています。実際セカンドヒットやボトムヒット、またはブラフでドンクベットをするプレイヤーが多いからです。しかし、上級者の行うドンクベットはこの限りではありません。
まず、この「オリジナルレイザーやアグレッサーまでチェックでまわす」というプレイについて解説します。これを理解していないと、ドンクベットがなぜヘタなプレイと言われているのかがわかりません。
オリジナルレイザーやアグレッサーまでチェックとは?
6人のテーブルで2名フォールド→COレイズ3BB→BTNとSBフォールド→BBコール
この段階で、自分のハンドが強いと主張しているのはCOで、それに対しBBはコールしていますから、常識的にはBBのハンドはCOよりも弱いか、もしくはどちらかわからない、という状態になります。BBのハンドのほうが強い場合、BBのアクションはリレイズになるはずだからです。
チェックやコールというのは、モンスターハンドで罠をかけいている場合以外、基本的には中程度の強さを意味します。
フロップが開き
1.BBのハンドが変わらず強さは中程度のまま(何もヒットしなかった)
プリフロップで自分のハンドがマージナルハンドであったのなら、何も状況を変えないフロップ(ラグ)だった場合今もマージナルハンドです。この状態で、強いと主張しているオリジナルレイザーより先にベットするのは合理的ではありません。先にベットしても、レイズされれば降りるしか選択肢はなくなります。なのでチェックが合理的となります。
2.BBのハンドがそれなりに強くなる(セカンドヒットなど)
低いランクでのペアの場合にベットすると、オリジナルレイザーがビッグペアだった場合レイズされます。ツーオーバーでもレイズするアグレッシブなプレイヤーもいます(ビッグペアを装う)。高いカード(絵札やA)でのペアの場合にベットすると、相手はプリフロップでレイズしていますから、相手も同じハイカードを持っている可能性がありその場合レイズされます。そしてそのほとんどの場合キッカーで負けています。どちらの場合ももちろんブラフの可能性があるわけですが、上記の可能性があるためにBBはレイズされるとフォールドせざるをえません。ですから、ペアができてもチェックでまわし、相手のアクションを待つのが合理的となります。
3.BBのハンドがかなり強いハンドになった(2ペア以上のハンド完成)
先にベットして相手が降りてしまった場合、せっかく利益をあげるチャンスを失うことになります。相手のCBにレイズして降ろすのが最も合理的でしょう。ナッツの場合もしかりです。ナッツができればこの場合スロープレイが最も利益をうみます。チェックして、相手のCBに対しジャストコール、ターン以降でも相手にチップを賭けさせるために全力を注ぎます。
4.ボードにドローが見えている場合
ボードが678であったり、同一スーツが3枚見えていた場合、BBがトップヒットしたのでオリジナルレイザーにドローをひかさないために先に打つという判断も合理的に見えますが、オリジナルレイザーはそれなりに強いドローがあれば高い確率でCBを打ちます。また、ドローはないが何かしらヒットしていた場合もプロテクトのためにCBを打ちます。つまりチェックチェックでまわることは稀です。もし、すでに相手にモンスターハンドを完成されていた場合、あなたのプロテクションベットはなんら意味がありません。
このように、ほとんどのシチュエーションで、「オリジナルレイザーやアグレッサーまでチェックでまわす」という行為は合理的となります。
プレイヤーの中には、アグレッサーまで機械的にチェックでまわすプレイヤーもいます。トップヒットしてようが2ペアになっていようがセットになっていようがチェックでまわすプレイヤーもいます。このように、機械的にチェックでまわすことで、自分のチェックは弱みではないというアピールにもなるのです。
しかしこれはヘッズアップの場合など、相手にフリーカードを与えることにもなりかねません。
自分が66 ボードKJ6 相手AsTh という場合、アグレッサーはチェックすることでタダでターンを見にいくことになり、安全にガットショットを引きにいけます。
「フリーカードを相手に与えるべからず」
こうした信念を持つプレイヤーにすれば、ドンクベットだろうがなんだろうが先にベットするでしょう。そして相手を降ろして小さなポットを獲得します。
片やターンでAが落ちて、相手にハンドを進展させ、最大限までチップを引き出そうとするプレイも、また間違いではありません。
TIPS ポジションのあるアグレッサーのチェックはナッシング
ポジションのあるアグレッサーは上記のように高い確率でCBを打ちます。逆に言うと、ポジションのあるアグレッサーのチェックは、高い確率でナッシングです。つまりなんの役もできていません。フロップフルハウスができており、相手に降りてほしくないからスロープレイをしている可能性もありますが、そのような可能性は低いです。ワンペア、2ペア、ドローなどのハンドでは、オリジナルレイザーはCBを打つことが最も利益をうみます。もしチェックでまわった場合は、ターン以降は、自分がベストハンドであると思われるならば、普通にベットすればよいでしょう。
このように、アグレッサーまでチェックでまわすという常識的な行為が一般的になっている中、先にベットするのは、上記のよう常識を知らない下手なプレイヤーか、何かしら意図を持ってベットしている上級者かのどちらかになります。
「やった!ヒットした!ベットしよう!」
という単純な理由でベットをしていたら、勝っている、もしくはレイズで降ろせると判断した時だけアグレッサーはレイズしてきます。勝ち目がないと判断したアグレッサーはフォールドするだけです。わかりやすすぎるのです。
相手に「私はボードがヒットしてペア以上ができました。」と告白しているようなものです。「後ろにアグレッサーがいるにも関わらず先に打てるハンドを持っている」という情報を相手に与えていることになります。
このように、多くの常識的なプレイヤーはアグレッサーまでチェックでまわすにも関わらず、先にベットするということは、この常識から外れているということになります。
では、意図的に行う上級者のドンクベットとはなんでしょうか。
ドンクベットは
- ボードにヒットしてワンペア以上ができたという主張に見える
- ボードを利用したブラフに見える
- ドローを安く引きたいために先に小さくベットしているように見える
- 相手にドロー引かせないためのプロテクションベットに見える
という効果がありますから、こう相手に見えてほしい場合に有効となります。
つまり、実際にモンスターハンドを完成させた時などです。
たとえばセットを引いた場合、通常チェックでまわし、アグレッサーによるCBに対してドロー目が強ければレイズ、スローをしてもよさそうならコール、というプレイが最も利益を生みそうです。
しかし先に小さくうつことで、相手にレイズする機会を与えます。それに対しリレイズ、もしくはジャストコールでポットをふくらませるということができます。また、ドンクベットに対しすぐには降りなさそうな相手の場合でもドンクベットが有効でしょう。これはドンクベットに対して強気の姿勢を貫くアグレッシブなプレイヤーに効果を発揮します。
「本当にハンドが強ければドンクベットはしないだろう」
そう考えるプレイヤーへの罠とも言えます。
ジョニー・チャンという有名プロの行うジョニーチャンプレイもドンクベットの一種です。
これはこちらのシマダさんのブログに詳しく書かれているので必読です。
http://d.hatena.ne.jp/shimadajp/20090811/p1
フロップでのチェックコールからターンでリード(ドンクベット)します。
状況によりますが、それによって自分のハンドの強さを明確に知ることができます。
ドンクベットに対し相手がレイズした場合、あっさりと自分のハンドが負けていることを知れます。
ドンクベットに対し相手がコールした場合、ボードによっては負けていると判断でき、もしくはドローを引きにきてると判断できるでしょう。もしかすると勝っているかもしれません。
幸運にも相手がフォールドする場合も多々あります。
例えばBTNが3BBにレイズ、BBがA5でコールしヘッズアップでフロップへ
フロップ:A73レインボー
BBが5BBドンクベット
これに対してBTNがレイズしてきた場合、Aと強いキッカーだと判断でき、フォールドできます。
ジャストコールの場合は、相手がAKなどでスロープレイという可能性もあるので、勝っていると断定はできませんが、慎重にプレイしたほうがよいことがわかります。
ターンリバーを見せたくないドンクベット
意図的なドンクベットで最も使いやすいのが、確実に勝っていると思われるが、ターンとリバーで捲くられるのを防ぐドンクベットです。
例えばハイポケ(JJなど)を持ってレイズにコールし、マルチウェイポットになり、明らかにAを持ったプレイヤーがいそうな状況で、フロップにローカードが並んだ時などです。
ローカードが並んだ現段階ではハイポケでベストハンドの可能性が高いため、先にベットすることでAxをフォールドさせます。
ターンやリバーでAやKが落ちた時にポジションがないと身動きが取れなくなりますから、そうなるの前に降ろしてしまうプレイです。
特に相手が複数人いる場合、ハイカードが落ちた時に誰かが持っている可能性は高くなりますから、ドンクベットは効果を発揮します。
QQであれば、AやKが落ちないかぎり勝っていると考えれますが、TTの場合、高い確率でTよりもランクの高いカードが落ちることになります(ピクチャーの何が落ちてもスケアとなります)。よってカードランクが低いポケットほどドンクベットしたほうがよいことが多くなります。
ベストハンドと確信を持って稼ぎにいくのか、ファストプレイでさっさと降ろすのかはシチュエーション次第でしょう。
リングであれば稼ぐほうに偏り、トーナメントで危険を犯したくないという場合は降ろすほうに偏ると思います。
※ドンクベットはアクションだけをとると悪いプレイのように書いていますが、意図的なドンクベットは決して悪いものではありませんので誤解しないでください。
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