疑似ポジションを使う

ポーカーにおいてポジションが重要であることは「ポジションの重要性」でも述べました。

ポジションの重要性
ポジションがいかに重要かを解説。

今回は、実際のポジションではなく、アンカーとなるプレイヤーを起点にした、疑似的に作りだされるポジションの優位性について書きたいと思います。

ポジションの優位性とは

通常最も有利なポジションはBTNとされています。

一番大きな理由は、一番最後にアクションをできるから、というものがあります。これはつまり、自分以外のプレイヤーの動向を先に知ることができる、という意味です。

よって、最初にアクションを行うUTGが最もポジションが悪く、BTNがもっともポジションが良い、と言うことができます。

プリフロップではBBが最後にアクションできるため、BBにもポジションの優位性があると言えますが、それはプリフロップのみに言えることですし、ブラインドを強制的に支払うというデメリットもあるため、総合的にはやはりBTNがもっともよいポジションなのです。

ポジションが良い、というのが「他のプレイヤーの動向を先に知ることができる」とするならば、そういう状況を意図的に作り出すことできれば、疑似的に良いポジションを得ることができます。

擬似ポジションの例

わかりやすい例で疑似ポジションを解説します。

9人のリングテーブルで全員それなりのスタックを持っています。

あなたの左隣りには、さきほどから頻繁にレイズし続ける超アグレッシブ(マニアック)なプレイヤーが座っています。このプレイヤーをクソアグレと呼びます。

アーリーポジションのあなたにAToというハンドがきました。それなりに強いハンドですが、後ろのクソアグレにリレイズされると、ポジションがありませんし、さらにその後ろから4ベットが飛んでくれば、AToは捨てざるを得ません。

そこで、あなたはリンプすることにしました。クソアグレは案の定レイズしてきました。

あなたまでフォールドでまわってきた

クソアグレ以外にこのポットを欲しがるプレイヤーはいないようです。あなたはAToで十分勝っていると判断し、リレイズ、もしくはコールしてフロップに挑みます。

あなたは、アーリーポジションという不利なポジションから、(クソアグレ以外に)ポットに参加しようとするプレイヤーが1人もいないことを知った上で、最後にアクションをすることができました。

クソアグレの後ろで3ベットが入る

クソアグレの後ろのプレイターが3ベットしました。3ベットしたプレイヤーはかなりタイトなプレイヤーだとします。クソアグレ相手とはいえ、ATo以下のハンドでこのようなことはしなさそうです。よって、あなたはAToを捨てます。

あなたは、アーリーポジションという不利なポジションから、(クソアグレ以外に)ポットに参加しようとするタイトなプレイヤーがいると知った上で、最後にアクションをすることができました。

フロップ以降の例

上の例と状況と同じであなたはATでリンプ→クソアグレレイズ、ここでBTNのタイトなプレイヤーがコールし、あなたまでフォールドでまわってきました。

あなたはBTNを警戒してコールすることにし、クソアグレもコール、3名でフロップへ進みます。

フロップ:Ah9d7c

あなたはトップヒットキッカーTを手にしました。クソアグレには勝っていると思っていますが、BTNの強さは不明です。クソアグレはほぼ毎回CBを打つとあなたは知っています

あなたはチェックするとクソアグレは予想通り大きなCBをうってきました。

BTNがレイズオールイン

あなたはBTNをAJ~AK、99、77だと考えフォールドしました。
クソアグレもフォールドし、BTNがポットを手にしました。

BTNがフォールド

あなたはクソアグレには勝ってると考え、チェックレイズしました。
するとクソアグレはフォールドし、ポットを手にしました。

クソアグレとBTNのアクションを先に見れたことで、あなたのアクションに影響を与えているのがわかります。

2名のアクションを、疑似的にですが先に見ることで、あなたは自分のハンドの強さをある程度判断することができたのです。

このように、見た目上はアーリーポジションという不利なポジションでありながら、他のプレイヤーのアクションを見た上で判断を下すことができているので、擬似的にポジションがある、と言えます。

アンカーとなるプレイヤーが必要

上の例のように、擬似的に有利なポジションを得るには、アンカーとなるプレイヤーが必要です。
※アンカー=錨(いかり)

クソアグレは頻繁にレイズするので、テーブルのプレイヤーは「クソアグレのレイズの後どうするか」を考えアクションします。クソアグレが起点となっているのがわかりますね。

クソアグレのレイズはある意味毎回UTGでレイズしているのとほぼ同じです。その右隣であるあなたは毎回BBのようなものです。

(擬似)UTGのクソアグレのレイズ→他のプレイヤーの動向→最後に(擬似)BBであるあなたのアクションという状況が、クソアグレがレイズする度に毎回発生することになります。

上の例ではあなたはリンプしていますが、レイズから入っても同じです。

あなたレイズ→クソアグレリレイズ→その後他のプレイヤーがどうするか、という情報を全て知った上で最後にあなたはアクションを行えます。

また、アンカーとなるプレイヤーが、コールではなくレイズしていることが重要です。レイズという強い情報が起点となるからこそ、他のプレイヤーの動向という情報に価値が出ます。

クソアグレのコールに対して、他のプレイヤーのコールやレイズではハンドレンジを狭めることはできません。

コストが必要

BTNの場合、チップを出さずとも他のプレイヤーのアクションを見てから判断できますが、この疑似的なポジションを得るためには、リンプやレイズなどしてゲームに参加しておかなければならず、その分のコストが必要になります。

そのコストを支払ってでも、こうした擬似的なポジションを得るメリットがあると判断できる場合は、積極的に利用していくべきでしょう。

まとめ

マニアックの左(ポジションがある)のほうがいい、というプレイヤーは結構多いと思います。自分も以前はそうでした。

マニアックの後ろにいれば、ハンドが強い時にはレイズして、弱いときは捨ててしまえるから判断が楽、という考え方です。

この考えは大きくは間違っていませんが、キツイ状況になることも多々あります。

例えばUTGがマニアックで自分のポジションが+1(UTGの後ろ)だったとします。

UTGのマニアックがいつも通りオープンレイズ、自分はハンドを見ると77でした。

UTGには勝っていると思いますが、あなたの後ろにはまだ8名のプレイヤーが残っています。

あなたがマニアックのレイズにコールして後ろから3ベットされる、もしくはあなたが3ベットして後ろから4ベットされると、77の判断は難しくなります。Axのようなハンドでも同じです。

しかしあなたがUTGでマニアックが+1だったとします。

あなたはマニアックがレイズしてくることはわかっています。よって77でリンプ(スタック量によってはレイズでもよい)します。

マニアックはいつも通りレイズし、そして他のプレイヤーの動向を見た上で最後にあなたは判断できるのです。

非常にプレイしやすいと思いませんか?

マニアックの後ろのプレイヤーの立場で考えて見ましょう。

あなたリンプ(orレイズ)→マニアックがレイズ(orリレイズ)、COのプレイヤーはハンドを見るとA9sでした。

マニアックには勝っていると思っても、マニアックがレイズしてくるのがわかっていてリンプ(もしくはレイズ)で入ってきたUTGのあなたの存在が不気味です。よって、微妙なハンドなので捨てることになります。

このように、マニアックの前にいるあなたに対して、他のプレイヤーはポジションを持たれていると感じるのです。(そう思えるレベルのプレイヤーである必要がありますが。)

こうしたアンカーとなるプレイヤーが左に座っている場合、このような疑似ポジションの優位性を理解してプレイしてみましょう。目に見えるポジションとはまた別のテーブル力学を感じることができ、ゲームを優位に進めることができます。

コメント 名前とメアドは必須ではありません

  1. 匿名 より:

    おっしゃる意味はおおいにわかりますが、その優位性はフロップがマルチウエイになった場合だけで、フロップ以降ではくそアグレとヘッズアップになる状況が多いかと思いますが、その場合毎回くそアグレに対してポジションなしでポストフロップを戦わねばならず、どう考えても総合的には不利です。
    くそアグレとさらに別のプレイヤーでマルチウエイになる場合というのは限られていると思われ、やはり毎回必ず戦うことになるくそアグレに対してポジションがあった方が有利と考えますが?

    • 鮫肌 より:

      こんにちわ。
      ちょっと書き方がおかしかったかもしれませんが、クソアグレに対してポジションがない方が、あるよりも良い、といっているわけではありません。

      自分よりもすぐ後ろにクソアグレが居ることで、こうした戦い方もあるからそれほど悲観的にならなくてもいいよ、というのが趣旨です。

      あとは、このクソアグレが下手くそであることも条件です。

      うまいルースアグレが相手の場合は、おっしゃる通りポストフロップがしんどいでしょう。

      なので、クソアグレのレイズにコールする場合、相手が自分よりも格下で、ポジションがなくても力量の差でポストフロップを戦える必要があります。

      また、コールしてフロップに進むのではなく。クソアグレのレイズに3ベットしたり、クソアグレの3ベットに4ベットしてリスチをするのもこの擬似ポジションを使うことで成功率があがります。

      自分よりも後にアクションするのはもうクソアグレしかいないので、リスチに対してまったく別のプレイヤーからオールインを被せられる、という心配がありません。

      もちろん、クソアグレ自身にオールインされる可能性もありますが、その可能性は低いです。(なぜならクソアグレのレイズするハンドレンジは非常に広く、オールインまでいけるハンドを持っている可能性が他のプレイヤーに比べて低いので)

      • 匿名 より:

        うーーむ。その戦い方だと、くそアグレとレイズ合戦を繰り広げるようなことになり、ハンドレンジ的には全般的にこちらが有利でも、激しい分散になりそうで、ちょっと怖くて自分にはできないと思います。
        そういうくそアグレって、やたら引きが強かったりするし、自分は異常に引きが弱いしで、無理してやってもぼろ負けする結果に終わりそうです。
        引きに自信があるとか、そういう激しいゲームが好きな人は良いでしょうけど。見てる人には面白そうですけどね。
        自分は見てる側に回りたいです。(笑)

        • 鮫肌 より:

          私も肩が弱い(引きが弱い)と思ってる人間なのでよくわかりますw

          ただ、肩の強弱をポーカーの戦略に含めてしまうと、数学的な考え方があまり意味が無くなってしまうので、サイト上では排除して考えてます。

          また、おっしゃるようにこのクソアグレとぶつかるのをずっと避けていると何もできなくないですか?左にクソアグレが座った時にです。リングなら席をたてばいいだけですが、トーナメントだとそうもいきません。

          どこかでぶつからないといけないでしょうから、その時に今回の考え方を利用してもらえればいいと思います。

  2. ピウス信者 より:

    鮫肌さんのおっしゃる通りだと思います。
    ただ一つだけ、注意点が存在します。

    それは相手のクソアグレがこちらのインプラをとてつもなく多く持って行けてしまうことにあります。
    例題のAヒットTキッカーという自分のハンドの時に、クソアグレのハンドがAJ、AQ、AKの時に多大なリスクをこちらが背負うことになるというわけです。

    そして逆に、こちらにインプラなどないのです。
    マニアックがTTでオーバーカードが落ち、ブラフに失敗した場合、こちらのハンドと闘うことを考慮しようとするでしょうか?

    もちろん、戦術的には、クソアグレの右に座ってポジションを得るということはよいでしょう。
    例題ではBTNは難しい判断を迫られているのは明白です。
    問題なのはそのクソアグレとヘッズアップになって戦えますか?という話です。

    そこからの話は、クソアグレがどのような力量かによりますので、今回の話は終わりにします。

  3. トム より:

    確かに、たまたまくそアグレの右に座ってしまった時にはその考え方で戦うべきとおもいますね。自分もそのような経験が、ライブで何回かありました。
    基本見てるだけになりますが、たまにチャンスハンドが回ってきて、そういう時に限ってバッドビートとか出なければまあいい稼ぎにはなります。
    ただ、選べる場合は、やはり可能な限りくそアグレの左に座るべき、と強く思います。
    テーブルの他のプレイヤーとの戦いはともかく、くそアグレとのヘッズアップに関しては、毎回ポジション無しではきつすぎます。

  4. なまめだい より:

    緊張の初コメです!w自分は大学生なんですが、一年前にi-phoneを買ったのをきっかけにポーカーを覚えました。ポーカー楽しいですね!ポーカー道、勉強になります。ありがとうございます。更新がんばってください!
    今回の記事に関してですが、それがタイトなテーブルでスタックも十分なら、自分なら広いハンドレンジでリンプコールします。おそらくくそアグレとのへッズアップの機会が増えるでしょうが、フロップ以降にルースアグレに対してポジションがないのはそんなに嫌なシチュエーションではないと自分は思います。

    • ポーカーマン より:

      全く関係ないんですけど鮫島さんのヘッズアップに関する考察が見たいです!

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