スチールは直訳すると「盗む」となります。ポーカーでのスチールは、その名の通り、ブラインドやリンパー達のチップを盗む技術のことです。もちろん、相手の手元にあるチップの山からチップを盗む、などという意味ではありません。
スチールとは
スチールは、プリフロップにおいて、レイズアクションを行って全員を降ろし、テーブルに出されたチップを手にすることを指します。
SBやBBは、強制的にベットさせられているため、ハンドが良いかどうかは完全に運となり、それほど強くないハンドが入ってることのほうが多いです。そこで、レイズを行い、中途半端なハンドのプレイヤーを全員降ろしてしまいます。
例
6人でプレイしており、あなたはポジションはBTNで、ハンドはでした。UTG→MP1→COの3名が全員フォールドしてあなたの順番がまわってきました。あなたの次にはSBとBBの2名のアクションが控えています。
あなたは3BBにレイズ。SBとBBはフォールドして、ブラインドの1.5BBを手に入れました。
これがスチールです。
SBやBBは、コールをしてもフロップ以降、ポジションがないのがわかっているため、それなりに強いハンドでなければコールできません。あなたの3BBのレイズにコールできるハンド(ランク4以上)が入る確率はそれほど高くないため、多くの場合、二人とも降ろすことができます。
スチールの注意点
スチールで大事な要素は
- 自分より前にレイズアクションが入っていないこと
- ポジションが良いこと
- タイトなテーブルであること
- あなたはタイトなプレイヤーだと思われていること
- なんでもコールするコーラーがいないこと
- ポットコミットしているプレイヤーがいないこと
などが挙げられます。
1.自分より前にレイズアクションが入っていないこと
スチールは、自分以外を全員降ろすことが目的です。
レイズが入るということは、ハンドが強いと主張しているプレイヤーがいることになり、あなたのリレイズに対しても降りない可能性が高くなります。
スチールはハンドで勝負するのではなく降ろすのが目的ですから、失敗した場合も考慮し、できるだ少ないコストで行うべきです。
そのためには、あなたより前にレイズアクションが入ってる場合、激しい打ち合いになってしまうかもしれないため、行うべきではありません。
2.ポジションが良いこと
1番と関係してきますが、あなたのアクションが後であればあるほど、スチールの成功率を見定めることが容易になります。
あなたがBTNだった場合、ブラインドの2名以外のアクションを全て見てから判断できます。あなたまでレイズが入っていなければ成功率は高く、スチールに適した状況と言えます。
レイズがあった場合、あなたのハンドの強さ次第でフォールドするか普通に勝負するかを選べばいいのです。
アーリーポジションでスチールを行ってもよいですが、あなたの後にリレイズやコールが入ってしまった場合、スチール失敗となります。
3.タイトなテーブルであること
必ずしもタイトなテーブルである必要はありませんが、タイトなテーブルほどスチールの成功率は上がります。
タイトということは、レイズアクションが発生した場合に、慎重になるプレイヤーが多いということになりますから、あなたのレイズに対しても、フォールドを選択するプレイヤーが多いことを意味します。
4.あなたはタイトなプレイヤーだと思われていること
あなたのレイズアクションに対し、まわりのプレイヤーがどう思うかです。
あなたのことをタイトだと思っていれば、あなたのレイズは「強いハンドが入った」と考えてくれます。しかしあなたのことをルースなプレイヤーだと思っていた場合、あなたがレイズしても「そんなに強くないハンドでスチール狙ってるな」と疑われ、幅広いハンドでコール、もしくはリレイズされてしまいます。
5.なんでもコールするコーラーがいないこと
あなたのレイズになんの脅威も感じず、気分次第でコールしてしまうような超ルースなプレイヤーや初心者がいると、降ろすことができません。
6.ポットコミットしているプレイヤーがいないこと
トーナメントなど、ブラインドがかなり高くなっている状況であれば、BBでスタックの3分の1を出してしまっているショートスタックのプレイヤーが出てきます。
そのようなプレイヤーは、通常であればフォールドしているようなハンドでもコールが正当化されてしまいます。つまり、あなたの3BBのレイズに対し、残りの2BBを出すことで6.5BBのポットをとりにいく、つまりオッズ3.25倍という状況が発生します。オッズ3.25倍は、30.7%の勝率があればコールできますから、幅広いハンドでコールされてしまいます。
スチールのテクニック
レイズ額を変える
リンパー(プリフロップでBBに対しコールする人)が多いと、ポットが膨らむため、あなたの3倍レイズにコールするオッズが良くなっていきます。そのため、全員を降ろす基準として、
- リンパーが0人の場合=3倍レイズ(3BB)
- リンパーがn人いる場合=(3+n)倍レイズ
という基準を設けると、コールされにくくなります。
ポジションを変える
あなたがBTNの時に頻繁にレイズ(スチール狙い)をしていると、時間が経つにつれて、まわりのプレイヤーはあなたのレイズをポジションによるものだと判断し、コールされやすくなります。
時にはCOから、時にはMPからスチールを行い、ポジションではなく”ハンドの良し悪しでレイズしている”と思わせなければなりません。
スタックサイズの把握
スチールは相手を降ろすことが目的なので、相手に降りたいと思ってもらわなければなりません。スタックに余裕があるプレイヤーは、それほど強くないハンドでもフロップを見にいこうとコールしやすい反面、ショートスタックのプレイヤーにとっては全てのハンドが命がけです。(特にトーナメントなら。)
そのようなプレイヤーほど、自分のハンドを絞るため、降りる傾向が大きくなります自分の座っているテーブルの各プレイヤーのスタックサイズ、チップリーダーは誰か、そのプレイヤーはルースかタイトか、など状況把握を行い、より成功率の高いタイミングでスチールを仕掛けましょう。
トーナメントでのスチール
リングゲームと違い、トーナメントではスチールが重要な戦略となります。リングゲームは、ずっと席にすわっていても、1周ごとにまわってくるブラインドが減っていくだけですが、トーナメントはそのブラインドが上昇し、さらにアンティ(参加費)が発生しますから、リングゲームに比べスタックの減っていスピードが早くなります。そのかわりアンティの分、スチールによる収入も大きくなります。
また、非常にタイトにプレイしていると、一向にスタックが増えず、どんどんスタックが減っていくため、スチールによってスタックの減りを抑える必要がでてきます。
トーナメントは飛んだら終わりのサバイバルゲームですから、他人のレイズなどのアグレッシブなアクションに対して多くのプレイヤーが慎重に対応します。そのため、一般的には、スチールの成功率もリングゲームより高いと言われています。
「トーナメントはスチールが全て」というプロプレイヤーもいるくらいです。
リスチール
リスチールとは、スチールを仕掛けてきたプレイヤーのチップを奪い取る技術です。これまで述べたように、スチールはレイズアクションによって自分以外を降ろすことが目的なので、自分のハンドの強さは関係ありません。(もちろん強いにこしたことはありません。)
よって、そのような弱いハンドでスチールをしかけてきているプレイヤーに、さらにリレイズを被せて降ろしてしまう技術です。
これは、レイズしたプレイヤーを「スチールが狙いでハンドは強くない」と予測することが必要なため、高度なリーディング能力が必要です。
さらに言えば、「相手のハンドは弱く、狙いがスチールだ」という読みに自信があれば、リスチールするハンドの強さも関係なくなります。リスチールも、全員を降ろすことが目的だからです。
このように、それほど強くないハンドでリレイズすることを、ライト3ベットと呼んだりします。(弱いハンドでリレイズすること、軽く3ベットすること、という意味です。)
最近では、スチール、リスチール(ライト3ベット)という技術が一般化しているため、ライト4ベットという概念も登場しています。
A9oとTJsでプリフロップで、レイズ、リレイズ、リリレイズと打ち合う姿は、初心者には意味がわからないかもしれませんが、上記のような考え方を元に行われています。(なんにも考えていない可能性もあります。笑)
コメント 名前とメアドは必須ではありません
初心者コメで申し訳ないです。
3bbのレイズに対する必要勝率は
2/(0.5+1+3)=44.4%
ですか?
確かリターンには自分が払う分も含めるので
2/(0.5+1+3+2)=30.7%
になるかと思ったんですが…
多分計算自体間違えてるんですが、どこがおかしいか教えて頂けるとありがたいです。
6.ポットコミットしているプレイヤーがいないこと
の計算についてでしょうか。これは記載している計算間違いですね。
2BBを出して8BBを取りにいくのではなく、6.5BBですので、オッズ3.25倍=必要勝率30.7%ですね。訂正しました。
自分がブラインドでない場合は、ポットにはSBの0.5BB、BBの1BB、レイザーの3BBの計4.5BBが入っています。そこに3BBを出すことになりますから、3BBを出して見返りは合計7.5BBになるので、オッズは2.5倍=必要勝率40%です。