ポーカーにおいて確率の考え方は非常に大事ですが、オッズに合った勝負を続ければ必ず勝つのか?という疑問が出てきます。
例えばこちらの勝率が上なのに何連続も負けることもあります。
本当に確率って収束するのでしょうか?
確率は収束するのか?
AKo-AQoでQを引かれてまけ、TPTKで相手フラドロで引かれて負け、こちらオーバーペア、相手アンダーペアでセット引かれて負け。
こうした負けが続くと「肩が弱い」「運がない」と考えてしまいます。
上ポケット、下ポケットのパターンで言うと、だいたい上ポケットの勝率は80%で5分の4の確率で勝利することになります。10回やれば8回勝利し、2回負けます。
では、10回勝負するとして、80%の勝率がありながらも最初に2連続で負けてしまった場合、確率だけ見ると3回目以降、残り8回全部勝つことになります。それでやっと80%という勝率になります。
よって、2連続で負けたあとの残り8回の勝負の勝率は全て100%になるのかというとそんなことはありません。3回目以降もきっちり80%の勝率のままです。3連敗の後でも10連敗の後でも100連敗の後でも勝率は80%のままです。(100連敗もすればそれは運ではなくイカサマだ、というような議論は横においておきます。)
直前の勝負が次回に影響を与えることがなく、それぞれが独立した勝負である以上、勝率が変わることはありません。
ルーレットで赤が3回続けば、次黒が出る確率は2分の1よりも高い確率で出るのかというとそんなことはないのです。次も、その次も、黒が出る確率は2分の1のままです。(0や00の存在は無視します。)
確率は収束するんだから赤が続けばその後黒が出続けないと収束しないじゃないか!という声も聞こえてきそうですね。
ここで問題なのは、試行回数が何回以上で収束するのか、ということです。
確率が収束するための試行回数とは
○分の1、という分数で表した確率は、だいたい分母の300~400倍で収束するそうです。
例えば勝率33%の勝負は、3分の1で勝つことになり、分母に300をかけて、約900回で収束することになります。
900回ですって奥様。
これは、
33%の勝率の勝負を900ハンド繰り返せば、ほぼ勝率通りの勝利数(300前後)になる
という意味になります。もしこの試行回数が少なければどうなるかというと、もちろん33%前後におさまることもあれば、大きく上にブレたり下にブレたりすることになります。そもそもきっちり数値通りになるほうが稀で、ほぼ上下にブレますし、試行回数が少なければ少ないほどブレ幅も大きくなります。
どれほどの確率で、試行回数が何回だったら振れ幅だいたいどれくらいになる、という数値もあると思いますが、ちょっと調べきれませんでした。統計学のプロならわかるかも。
サイコロでシュミレーション
わかりやすい例として、サイコロの出目のシミュレーションを使ってみましょう。
http://rikanet2.jst.go.jp/contents/cp0530/contents/07-14.html
※上記サイトが消えてしまったので、これから試してみたい人は以下をどうぞ。
サイコロは6分の1の確率でそれぞでの出目がでます。1回ふって特定の値が出る確率はパーセンテージにすると16.6%です。
ポーカーに置き換えて、6人全員が勝率16.6%のハンドでオールインしたとしましょう。
理論上は10回勝負をすれば全員が1.66回ずつ勝つことになります。上のシミュレーターで言うと、それぞれの出目の出る相対指数(確率)は0.166になるはずです。
では上のシミュレーターでで10という数字を入力してみてください。
どうですか、回数が10回だとまず過違いなくガタガタにブレますよね。
では分母を300~400倍すればいいと書きましたので、6×400=2400回にしてから再挑戦してみます。シミュレーターで2400と入れてしばし待ってみてください。
どうでしたか?ほぼ数値通りの0.16付近になるのがわかります。100回や200回ぐらいだと、まだどこかが飛び抜けたり、どこか凹んだりします。
これはよく考えればわかることで、例えばサイコロをなげて奇数がでる確率は2分の1(50%)ですが、2回ふるとして
- 奇数偶数1回ずつ(奇数が出る確率50%で理論値にぴったり)
- 2回とも奇数(奇数が出る確率100%)
- 2回とも偶数(奇数が出る確率0%)
という結果のどれかになりますが、後者の2つはブレ幅はMAXです。しか2回投げて奇数が連続で出たり、偶数が連続で出るという現象は特に珍しいことではありません。
しかし100回投げれば、ブレ幅が最大の「100回とも奇数」や「100回とも偶数」というのはなかなか起こりえません。(可能性として0ではないですが)
ただ、100回程度であれば、奇数65回偶数35回というブレは稀にありえそうです。これは本来奇数がでる確率は50%でないとおかしいのに、65%の確率で出ていますから、ブレ幅は15%(15回)もあることになります。
では回数を、収束すると言われている600回(2×300)にするとどうでしょう。大きくぶれたとしても奇数330回、偶数270回ぐらいになりそうです。奇数の出る確率は55%とさきほどの65%よりも確率通りの数値に近づいているのがわかります。
しかし、100回のときは15回のブレ、600回のときは30回のブレがでており、回数だけ見ると奇数が確率以上に出る数は増えています。ブレる回数は増えるけど、確率通りに出る回数はもっと増えてるので、全体的に見た割合で言うと数値通りになっている、ということです。
では1投目から50回連続で奇数が出たとします。600回ふればだいたい収束していくのであれば、残りの550回のうち、偶数が出る頻度は高くないといけない、なので偶数が出やすいと言える。
何度も言いますがこれは間違いです。51回目~600回目、どこをどうとっても毎回2分の1です。
よって、50回連続で奇数が出たあと、残りの550回を振ると、最終的に奇数が大幅に多いまま終了する可能性は非常に高くなります。(可能性が高いだけで、もしかすると偶数がびっくりするほど連続で出て、偶数が逆転する可能性だってあります。)
では、50回連続で奇数が出た後、試行回数を1万回に増やしたとします。残りの9950回の中で、偶数が若干多くでれば最初の50連続奇数というブレは吸収されて、だいたい50%前後に落ち着きそうな気がしませんか?
1万回だとまだ少ないので100億回にしましょう。100億回もふれば、どちらかが連続で何十回も出る、という現象は珍しくなくなります。
奇数(もしくは偶数)が連続で50回出る、という現象は100億回繰り返される試行の中では珍しいものではなくなり、どこかで発生する普通の現象になるのです。(100億回でも50回連続はねーよ、という場合は100京回にすればいいだけです。)
このように、試行回数を無限に増やせば、必ず理論上の数値に収束するというのが「大数の法則」です。
しかし無限に増やすといっても人間の人生は有限です。ポーカーで言うならプレイできるハンド数も限られています。
このような法則をポーカーに適用してもいいのでしょうか?
ポーカーに見る確率
さて、勝率33%、というのはポーカーをしていてよくある数字です。フラッシュドローや2オーバーオープンエンドなどです。
こうしたシチュエーションで、なぜか良く引く人、もしくはまったく引けない人というのが存在します。
3分の1の勝率なので約900回行えば勝率33%に近くなるわけですが、ライブポーカーでフラッシュドローを引きにいったりなにかしらのアウツを引きにいく、というシチュエーションが900回に達するのはかなりの時間を要します。
1時間に20ハンドとして毎日5時間ポーカーをすると1日100ハンド、参加率(フロップを見る)が15%とすると1日の参加ハンドは15回、その中でドローを引きにいくシチュエーションが20%あるとすると1日に3回です。
つまり900ハンドに達するには300日、毎日はしんどいので休日などを加味すると約1年です。
1年たってやっとドローを引きにいく確率が収束するわけですね。
ただし毎日ライブを5時間というのはかなりヘビーなプレイヤーです。ライトプレイヤーならこれが2年~5年といった時間になるわけです。
2年たって収束するとした場合、運がいい月(上にブレる)や運が悪い月(下にブレる)というのが出てくるのは当たり前です。
これを1週間単位や1日単位にした場合、まず間違いなくどちらかにブレます。
1日で見るとたった3回の試行回数です。3回とも引けないと運が無い、2回引くと運がいい、3回引くとめっちゃ運がいい、ということになります。
しかし2年たってやっと収束するのだから、1日だけ切り取れば、こんなブレは当たり前の現象なのです。当たり前の現象なのに運がいい、運が悪いと一喜一憂するのは、なんだかおかしな話ですよね。
ただし、900ハンドというのはオンラインではそれほど難しいことではありません、毎日1000ハンドプレイしていれば、ドローを引きにいくという条件のシチュエーションが900回に達するのはそれほど時間を必要としません。
多面打ち(ゲーム画面をいくつも開いて6テーブルで同時に打つなど)をしていれば、1日にライブの10倍の1000ハンドをこなすのは簡単です。
1年で収束する確率も、オンラインだと1ヶ月です。カジノバーのように店舗の営業時間を考えないでいい上に、対戦プレイヤーは世界中にいるのでオンラインは24時間プレイできます。つまりやろうと思えばもっとハンド数を増やすことも可能です。
オンラインポーカーは試行回数が多いため、ある程度は確率通りの結果になります。期待値プラスのプレイを淡々と続けていれば、確実に勝てる(可能性が高い)と言えます。
逆に言うと、数万ハンドこなした結果成績がマイナスなのであれば、プレイに修正が必要だと断言しやすいのです。つまり「運が悪い」という言い訳ができないわけです。
しかしライブしかしていない場合は試行回数が少ないので、ブレは必ず出てきます。上にブレるのか下にブレるのかが、いわゆる運と言われているものになります。
オンラインはあまり好きじゃない、ライブ専門でプレイする、という人は、こうしたブレと付き合っていかなければなりません。
オッズ通りにプレイしているのに中々勝てないこともあるでしょう。そんな時はこう考えて気を落ちつせます。
「長い目でみれば必ず勝てる」
ただし、オンラインなら1ヶ月や1週間である程度の結果が出て修正できるのに対し、ライブだと1年たってやっと自分がやってきたプレイが正しいのかどうかわかります。そもそも1年間まったくスタイルを変えずにプレイするというのはかなり根気が必要です。
だからといって1ヶ月やってみて勝てないからスタイルを変えると、それが運が悪くて勝てなかっただけなのか、プレイスタイルが間違っていて勝てなかっただけなのか判断が難しいのです。
よって、ライブ専門のプレイヤーは、確率と回数に頼った勝負ではなく、確率論以外の技術を駆使し、1ハンドに重きをおいてプレイする傾向が高くなります。
リーディングや相手のテルを読み取る技術、その場の流れや、勝負感によるプレイです。
もちろん、数学的に正しいプレイというのはベースに必要だと思います。
その上で、下ブレしている状況でも勝率を高めるための努力がライブのプレイヤーには必要です。
相手プレイヤーの表情、癖、スタイルを見抜き、ブラフによって相手を降ろしてポットを取る、といったプレイは、オンラインよりもライブのほうがやりやすいと言えるでしょう。
もちろんブラフも成功率という数字で表すことができますが、どちらかというと相手の思考を読んだり、混乱させるといった、メンタル的な駆け引きになります。
まとめ
一番いいのは、当たり前ですがオンラインとライブの両方で腕を磨くことです。
オンラインでライブでは不可能な膨大な数のハンドをこなしてプレイを磨き、それをベースにライブ特有の技術も磨く。それが最も強くなる手段だと思います。
また、肩が弱い、と思っているプレイヤーは、それは結果論でしかないということを知っておくべきです。
相手に捲くられて負けが続いたからといって、次の勝負も負けやすいということはありえません。勝率33%の勝負ならば、その勝負は肩が弱い人でも肩が強い人でも勝率は33%なのです。
たくさんのプレイヤーの中には死ぬまでバッドビートをくらい続ける人もいるでしょうし、通常以上に運を発揮して引き続ける人もいるでしょう。それらは全て結果論です。
結果として肩が強かったのか弱かったのか、それはポーカーをやめる時までわかりません。極端な話、はじめてのポーカーで2アウツを引いてクワッズになり、すぐにポーカーをやめればイチロー並の肩を持つウルトラ豪運プレイヤーとしてポーカー人生を終えることができますし、はじめてのポーカーでバッドビートを連続でくらい、そこでポーカーをやめてしまえば、エドワード・ノートン並の撫で肩悲運プレイヤーとしてポーカー人生を終えます。
「もうポーカー5年やってるけど絶対勝率以下でしか勝ってない、おれは肩が弱い、この先続けてもこれまでの負け(下ブレ)を補うには何年かかるのやら・・・。」という人もいるかもしれません。
しかしポーカーの素晴らしいところは、確率のブレを補える技術力というものが存在することです。
ダニエル・ネグラーノは運良くプロになったのでしょうか。トム・ドワンは肩が弱く(下ブレ)なるとポーカー界から姿を消すのでしょうか。そうは思いません。
肩が弱いと嘆く前に、技術を磨く努力をしましょう。
肩の弱さ(下ブレ)を吹っ飛ばせるだけの技術というものがポーカーには存在すると信じてます。肩で勝負が決まるなら、このサイトいらないですしね(笑)
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